マッチングアプリ「Bumble」は本当に「女性主導」か? フェミニストが試してみた

Unsplashより

マッチングアプリ「Bumble」をご存知だろうか。

日本でも広く使われているマッチングアプリ「Tinder」の創業にも関わった女性起業家のホイットニー・ウルフ・ハードが2014年に開発したアプリで、米国ではすでに広く使われている。

Bumbleが掲げることのひとつに「女性主導」がある。CEOのウルフは、Bumbleを創業した理由に、従来のアプリでは男性側が女性側にアプローチする傾向があり、これを変えたかったと繰り返し語っている

では、Bumbleは本当に「女性主導」なのか? あくまで一個人の経験ではあるが、3年ほど前にTinderを使っていた私が、2021年9月中旬に東京でBumbleを1週間程度使って感じたことをレポートしたい。

Bumbleウェブサイトより

BumbleとTinderの違い

Bumbleの仕組みはTinderに極めて似ている。マッチする相手は「異性」「同性」「どちらとも」を選択でき、選択した性別の相手のプロフィールが記載されたカードが次々と表示される(私は今回「異性」を選択した)。気に入った相手のカードは右に、そうではない相手のカードは左にスワイプしていく。

Tinderの場合は、お互い右にスワイプした場合マッチが成立し、相手にメッセージを送れるようになる。BumbleのTinderとの最大の違い、かつ最大の「売り」は、異性同士の場合、マッチが成立しても男性側からメッセージを送ることができないという点。女性側からメッセージを送らなければ、マッチしたとしても会話を始めることはできない。Bumbleが「女性主導」を謳う理由だ。

その他にも細かい違いは多々ある。たとえば、Tinderではプロフィールに写真が複数枚掲載されている場合、写真の右側をタップすると、写真だけを連続して何枚も見ることができる仕様になっているが、Bumbleの場合は縦スクロールのみ有効で、写真の間にプロフィールが挟み込まれる。利用者にプロフィールをなるべく読ませようとする意図が感じられる。

また、Tinderでは職業や学歴、趣味などをプロフィールに設定できるが、Bumbleではそれ以上にデリケートな(そして、そうであるがゆえに、おそらく本格的な交際に進む上で問題となってくる)項目をプロフィールに設定できる。たとえば、政治的指向や宗教、交際への姿勢や子を持つことを希望するかどうかなどだ。

実際に使ってみた

私は政治的指向を「リベラル派」、宗教を「無神論者」、交際への姿勢を「真剣な交際」、子を持つことへの希望を「欲しくない」と設定した。また、「趣味・興味」の項目では「写真」「グルメ」などに加えて「フェミニズム」を選択してみた。

「保守派」「政治に無関心」と設定している人とはおそらく交際に発展することはないのではと考えたので左にスワイプした。当初は子を「いつか欲しい」と設定している人も同様に左にスワイプしようと考えていたが、すぐに男性のほとんどが子を「いつか欲しい」に設定していることに気がついた。

体感では、「いつか欲しい」と設定している男性は8割くらい。これではなかなかマッチしないと考え、「いつか欲しい」と設定している男性も右にスワイプしていると、彼らとも多数マッチが成立した。多くのユーザーは「相手のプロフィールの設定はあまり見ていない、もしくは気にしていない」というのが実情なのかもしれない。

マッチしてからは、24時間以内に女性側からメッセージを送り、それから24時間以内に相手からメッセージが返ってこないと、互いにメッセージが送れなくなる。

検証する意味合いも込めて、マッチした人にはなるべくメッセージを送ってみた。体感では、そもそもメッセージが返ってこない割合が2〜3割、1通目のメッセージは返ってくるが、その後返信が滞りがちな割合が3〜5割、積極的にメッセージが返ってくる割合が2〜3割、という感じだ。

性的ハラスメントがほとんどない

こうした細かな仕様のおかげか、BumbleはTinderに比べ女性にとって使いやすいアプリになっているのではないかと感じた。

Tinderでは、メッセージの一言目から性的なハラスメントにあたる言葉を投げかけられることも少なくなかったが、60人以上とやりとりしたBumble上ではそういったことがほとんどなかった(一件だけ、明らかに性的意図をもって「ヌード写真を撮影させて欲しい」と送ってきた人がいた)。

また、Tinderでは初回のデートに夜の時間帯を提案してくる人が多かったが、Bumbleではコーヒーやお茶など、昼の時間帯の誘いが多かった。なお、これは新型コロナが流行中だから、という可能性もある。どちらにせよ、流行の状況を踏まえ、直近の日程のお誘いは断らせていただいたが。

全体的にガツガツした態度の男性も少ないと感じた。Tinder上ではやりとり中にこちらがフェードアウトしてしまうと、重ねてしつこくメッセージを送ってくる男性が珍しくなかったのだが、Bumble上ではほとんど出会わなかった。

Bumbleのプロフィールを読ませる作りや、細かなプロフィール設定などが、長期的な交際への関心が比較的高い層を呼び寄せている面もあるのだろう。しかし、やはりBumbleが最大の売りにしている「女性側からしかメッセージを開始できない」という仕様の効果も大きそうだ。

異性愛男性の、マッチングアプリでの体験

異性愛男性の友人に、Tinderを使った感想を聞いたことがある。友人曰く、Tinderでは男性側は極端にマッチが成立しづらく、マッチしても女性側からメッセージが来ることはまずない。

必然的に男性側からマッチしてメッセージを送るのだが、返信がくることも稀で、返信が来たとしても会話するつもりがあるんだかないんだか……といった内容であることが多いのだそうだ。

Tinderでは多いときには日に数十件マッチが成立し、周囲の女性の友人からも同様の話を聞いていた私は、Tinderをめぐる男性の経験と、女性の経験の差に驚いた。

これは、おそらく「男性は性に対して積極的であるべき」「女性は貞淑であるべき」などといった社会に存在するジェンダー規範が、アプリ上でさらに拡大されるために起こるひずみなのだろう。

Bumbleでもおそらく女性側よりも男性側のほうがマッチしづらいだろうと推測するものの、Bumbleの場合「メッセージを開始できるのは女性だけ」と制限をかけることで、男性がマッチングアプリに感じている徒労感やフラストレーション、「一人相撲」感を緩和できているように感じる。

「女性主導」より「女性フレンドリー」

徒労感やフラストレーションを感じているからといってハラスメントをしていいということには全くならないが、この点が、前述した通り、男性側の不快な言動がBumble上で比較的少ないことに影響しているのかもしれない。

今回の体験では、マッチ後のデートの誘いはほぼ男性側からだったこともあり、「女性主導」と銘打つほど女性側のアクションを促す仕組みがあるかと言うと疑問は残るが、Tinderより確実に「女性フレンドリー」であると感じた。マッチングアプリでの異性との出会いに興味がある女性には、そこそこおすすめだ。

執筆=

インターネットとフェミニズムに関する発信をするメディアです。