最近TLで見かける「DIVA」ってどういう意味? DIVA自身が答えてみた

Sisterlee(シスターリー)
11 min readJul 30, 2021
UnSplashより

最近、kemioの「私が人生で学ぶことは全てLady Gagaが教えてくれた」というツイートを見た。咄嗟に「私の場合は誰だろう?」と考え、たどり着いた答えはChristina Aguilera, Madonna, Mariah Careyだった。

3人ともDIVAと呼ばれるアーティストだ。また、私の所属する界隈はTwitterのフォロイーをTL DIVAsと呼ぶ。

今やDIVAという単語は、本来の意味を超えてその精神性をも指しているように思える。では、私にとってDIVAは何を意味しているか。これまで直感的に使っていたDIVAという言葉を、本稿で紐解いていきたい。

私にとってDIVAとは

まず、辞書でDIVAを調べてみた。

(オペラの)女性歌手、主役、プリマドンナ[ラテン語 ‘goddess’ の意]

もともとはオペラにおける単語であり、現在私たちが使っているDIVAはそこから派生した意味合いを持つことがわかる。更に、その語源を調べた。

光り輝くこと、または特に空・天国・神などを表す。Tuesdayなどの由来として、(戦いと空の)神。Julyの由来として、Jupiterから降りた者。

なるほど、これらの語義から「自分を人生の主役として捉え、光り輝いて生きていく。そのための戦いなら果敢に挑む」という精神性が見えてくる。

では、その精神性を細かく分類するなら? ここで参考にするのが、2016年にLGBTQへの理解を促す団体GLAADにおいてアライ賞を受賞したMariah Careyのスピーチである。

マライアは、LGBTQを「Legendary(伝説的な)のL、Gorgeous(ゴージャス)のG、Beautiful(ビューティフル)のB、Tantalizing(たまらなくセクシーな)のT、そしてQuality(気品ある)のQ」と表現し、会場を大いに盛り上げた。当時、私が会場と同様に沸いたことは言うまでもない。

それをDIVAに当てはめるとどうか。単純に「Damn, I’m Very Awesome!(やだ、私って超最高!)」と文章にするのもいいかもしれない。

しかし、ここは大先輩マライアに倣って単語をそれぞれ当てはめてみた。私にとってDIVAとは「Dramatic(ドラマチックな)のD、Intense(強烈な/懸命に)のI、Vital(生気を与える)のV、Aid(援助する/助成する/促進する)のA」である。

Dramatic(ドラマチックな)

まず、DIVAは激情的である。Alanis Morissette「You Oughta Know」のメロディを叫ぶように歌う歌唱法、Kelis「Caught Out There」の絶叫はアイコニックで、心の内を殴り書きしたような歌詞は、多くの人に共感を与える。私の場合、青春時代はAvril Lavigne「My Happy Ending」を繰り返し聴いては、気にかけてくれているようで、実は私からノートを借りたいだけだった好きな人のことを考えていた。

次に、DIVAは静止画であればアート、動画であればショウである。歌で圧倒することはもちろん、ヘアメイク・衣装・振付・舞台装置・演出においても驚かせ、視覚的な面でもファンを楽しませる。これは辞書上の意味にも繋がってくるが、DIVAは自分自身が主役であり、それを光り輝くショウとして観客に見せる。DIVAとは生き様である。そして、DIVAを語ることは自分の人生を晒すことと同義である。

ドラマチックである最たる例は、オルターエゴではないだろうか。自分の表現の幅を広げるために(もしくは気分で)DIVAが形成する、別人格のことである。Mariah CareyはBianca、BeyoncéはSasha Fierce、Jennifer LopezはLola、MARINAはElecrta Heartという別人格をそれぞれ生み出した。なお、Beyoncéは2010年に「サーシャはおしまい。私は彼女を殺したの」と発言している

Intense(強烈な/懸命に)

DIVAはエンターテインメントに関して一切妥協をしない。最高の作品を作るため、最高のコンディションでショウに臨むために懸命に努力する。

そのためには宿泊先のホテルに無理難題な要求を出すし、自力で歩ける距離であってもエスコートをつける。照明やアングルにもこだわりを持ち、事細かに要求を出す。プロデューサーをスタジオに缶詰にするし、曲が気に入らなければレコーディングに姿を見せない。

これらの行為が「わがままである」と批判されることも多く、ZAYNはOne Directionとして来日した際、スタッフに「メンバーの誰が一番わがまま?」と訊かれて「DIVAみたいにってこと?」と確認している。

また、DIVAは反骨精神の持ち主である。例えばMiley Cyrusは『Can’t Be Tamed』、Rihannaは『Unapologetic』『Anti』、Madonnaは『Rebel Heart』というアルバムをリリースしている。Christina Aguileraは「反社会的なんじゃなくてくだらないことが嫌い」と発言している

今でこそDIVAが政治的スタンスを表明することは珍しくなくなったが、イラク戦争が勃発した2003年、The Chicksはブッシュ元大統領を批判して業界から干され、数多くの脅迫を受けた。過激な反戦メッセージを表現したMadonnaの「American Life」MVは差し替えとなった。

3年後、業界と脅迫に対する心情を綴った「Not Ready to Make Nice」でカムバックしたThe Chicksは、翌年のグラミー賞で主要4部門中3部門を制覇した。P!nkも「Dear Mr. President」でブッシュ元大統領を痛烈に批判するなど3年で状況は変わったが、The Chicksにとっては命の危機を感じ続ける3年間だった。

このように、DIVAは自分の信条を貫きながらも、それと同時に自分が生身の人間であることに自覚的である。だからこそ、Christina Aguilera『Stripped』、Lindsay Lohan『A Little More Personal (Raw)』のような生身をさらけ出したパーソナルな作品が愛されるのではないだろうか。

Vital(生気を与える)

DIVAの特徴として、エンパワメントがある。例えば、DIVAは自己愛をテーマにしたアンセムを数多く生み出す。「年齢はただの数字に過ぎないし、そもそも私はまだ若く、年相応に振る舞うつもりは毛頭ない。自分の見た目が好きだし、嫉妬は見苦しいし、私は謝らない。みんな私みたいになりたいでしょ? でも私は常に新しい自分に生まれ変わってる。働いてお金を稼ぐし、セックスの主導権も私が握る。そこらの音楽に飽きたなら、この私を聴けばいい」といった具合である。

このように自分のすべてを誇っている姿が聴く人に生気を与え、そして影響を与える。

Aid(援助する/助成する/促進する)

この項目が、私がDIVAを構成する要素のうち最も重要だと思っている部分だ。DIVAはいつの時代も愛の人であり、DIVAとは継承されていく精神性であると考える。

まず、(特に)クィアな人々に自分を愛してほしいと寄り添う。自分が持っている自己愛を、聴く人に継承する。

私は自分の性のアイデンティティが定まっていなかった中学時代、Christina Aguilera「Beautiful」のMVで男性同士がキスしている映像を、そしてt.A.T.u.「All the Things She Said」のMVで女性同士がキスしている映像をほぼ同時期に観た。恋愛は男女間だけで成立するものではないことを、初めて知った。アギレラの「誰が何と言おうとあなたは美しい」という歌が、私という人間の確立を手助けしてくれた。そしてこのテーマは、さまざまなDIVAによっていつの時代も歌われている。

また、DIVAは自分に向けられた愛をチャリティという形で返すことがある。それは寄付であったり楽曲のリリースであったり、形はさまざまだ。ガン患者の支援を目的に制作された「Just Stand Up!」は伝説のステージである。

そして、DIVAはかつて自分が先輩に見出されたように後輩を見出し、DIVAに限らない新しい才能を積極的に起用する。例えばキスによってMadonna認定のDIVAとなったBritney Spearsは、当時無名だったThe Outsydersが作った「Womanizer」で全米1位を獲得。同様に、Christina Aguileraも当時は知る人ぞ知る存在だったSiaの曲をアルバム『Bionic』に4曲起用した。

その後もブリトニーはRihanna、Kesha、Miley Cyrus、Iggy Azalea、Tinasheと、アギレラはLady Gaga、Ariana Grande、Demi Lovatoとコラボしている。特にコラボは、普段ソロを極めている者同士ということもあり、その化学反応がとても楽しい。

最後に、DIVAが綴ったパーソナルな歌詞は、励ましとして機能する。私にとって、それはMariah Careyの「Through the Rain」だ。家庭内に罵声と暴力が飛び交っていた時期、私はヘッドホンでこの曲を繰り返し聴き、人生が晴れることを待っていた。ウィスパーから徐々に熱を帯びていくボーカルに、今でも優しさと強さをもらっている。

ここまでDIVAについてあれこれ語ってきたが、これらに通ずる精神性を持っている人はDIVAであり、何かひとつでも当てはまる言動をすればそれはDIVAである。そもそも、私の定義に何ひとつ当てはまらなくても、自分がDIVAだと思えばDIVAである。DIVAにあらゆるボーダーは存在しない。ドラマ『Glee』におけるエマ先生の名言を拝借しよう。

「誰もが内にディーバを秘めてる」(Season 4 Episode 13「Diva」より)

Periodt.

TL DIVAsについて

DIVAの精神性を持っているTL DIVAsについても言及せねばなるまい。

TL DIVAsのうち十数人は、00年代後半、ブログが盛んだった時期に出会った。当時はブロガーによる音楽感想記事の全盛期で、自分が買ったCD名を検索してヒットしたブログを読み、共感したらWeb拍手を送り、ブックマークして日参するようになり、勇気を出してコメントを残していた。そのコメントへの返信から交流が始まり、互いのブログを相互リンクにし、交流を深めていった。当時覇権を握っていたmixiはそっちのけだった。

その後Twitterに移行し、そのお手軽さから、10年代前半にはブログは下火になっていった。Web拍手はRT・Favに、ブックマークはフォローに、コメントはリプライに、相互リンクは相互フォローに変わった。そして人脈が広がり、長文を書くことが苦手になり、現在に至る。最近では、TL DIVAsのブログを読んで育ったというアイドル・ゆっきゅんが「DIVA ME」という曲で鮮烈なソロデビューを飾った。

個人的に興味深いのは、ここ数年で少しずつ、 TL DVIAsの中でも K-POPを聴くようになった人が増えたことだ。

ちょうど、以前から追っていたDIVAがベテランの域に達してリリースペースが落ちてきた10年代後半、BTSを筆頭にK-POPの勢力が世界的に増してきた。もともとDIVAに圧倒されるのが好きで常に新しいものを探している人たちが、K-POPの磨き上げられたパフォーマンスと練られたコンセプトに惹かれるのは、ごく自然な流れだったと思う。

DIVAの発言や曲で価値観をアップデートし続け、そこにK-POPも参入し、ますますカオスを極めていくTL。だからこそ、半期に一度それぞれのベストを集計して「好き」が重なると嬉しくなる。

さまざまな社会問題が可視化されている世の中で、DIVAの精神は”心の武装”である。人生の主役は自分。自分がどうしたいか。愛する人たちには、気分良くいてほしい。

From diva to diva, love is love.(※)

※……Charlotte Perrelli & Dana International「Diva to Diva」より。ユーロビジョン歴代優勝者のふたりによるコラボレーション。

※2……2021/07/30 22:30 「Happy Ending」を「My Happy Ending」に修正しました。

執筆=ゆずひめ

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